全ての健康保険制度に存在する「高額療養費制度」
日本には、皆保険制度があり、日本人であれば必ず何らかの健康保険制度に加入しています。
例えば、
自営業者等の方であれば「国民健康保険」
会社員の方であれば「協会けんぽ」や「組合健保」
公務員の方であれば「共済組合」
といった具合に、必ず何かしらの健康保険制度に加入しています。
健康保険制度は、加入している制度によって微妙に内容が異なります。
ですが、全ての制度に共通して存在するものがあります。
それは
高額療養費制度
です。
この高額療養費制度は、入院時に備える医療保険を検討する際に非常に重要なものです。
この制度があることで医療保険で備えるべき負担を軽減することができます。
なお、この制度ですが、平成27年1月から制度が改正され、所得区分の変更がありました。
改正のポイントについては、別ページで詳しくまとめています。
平成27年1月からの高額療養費(医療費)制度の改正点とは?
このページでは、制度改正後の高額療養費制度について説明します。
そもそも高額療養費制度とは
病気やけがなどで長期入院をすると、医療費が莫大になります。
そうした医療費の負担を軽減するための公的保障が、高額療養費制度です。
高額療養費制度は、健康保険適用後の3割負担部分で、一定額を超えた場合に超えた分を還元する制度です。
すなわち、自己負担が高額になった場合に更に保険者が医療費を負担してくれる制度です。
≪高額療養費制度のイメージ≫
実際には、高額医療費制度は所得によって、適用となる高額療養費区分が変わってきます。
ですが、仮に一般的な所得者の場合であれば、以上のように100万円近い医療費がかかったとしても、高額療養費制度により、約9万円弱の自己負担で済みます。
【27年改正後版】所得区分による高額医療費の計算方法
実際に計算してみよう
では、実際に高額療養費制度が適用されると自己負担額がどの程度かになるのかを考えてみます。
各所得部分に応じて、かかった医療費総額を以下の計算式に当てはめて計算します。
以下の表の「医療費総額」とは、健康保険制度が適用となる前の10割分の医療費のことを指します。
高額療養費の区分表
所得区分 | 自己負担限度額 | |
---|---|---|
1ヶ月の負担上限額 | 直近12ヶ月間で3回高額療養費の支給を受けている場合※ | |
区分ア 健保:標準報酬月額83万円以上 |
252,600円+(総医療費−842,000円)×1% | 140,100円 |
区分イ 健保:標準報酬月額53〜79万円 |
167,400円+(総医療費−558,000円)×1% | 93,000円 |
区分ウ 健保:標準報酬月額28〜50万円 |
80,100円+(医療費−267,000円)×1% | 44,400円 |
区分エ 健保:標準報酬月額26万円以下 |
57,600円 | 44,400円 |
区分オ 住民税非課税者 |
35,400円 | 24,600円 |
※この場合は「多数回該当」と言い、自己負担額が1ヶ月の負担上限額よりも少なくなります。
健保と国保で基準が異なる
会社員等が加入している健康保険(健保)と、国民健康保険(国保)では基準が異なります。
健保の場合は、健康保険の保険料を決定する際に用いる標準報酬月額により区分が決定されます。
標準報酬月額とは?
健保の方の所得区分は、健康保険料算定の基準となる「標準報酬月額」に応じて区分されます。
標準報酬月額は、毎月の税引前給与額(各種手当含む)を、標準報酬月額表に当てはめて算出します。
平成27年の改正で所得区分が増えた
平成27年1月1日から、高額療養費制度は改正されました。
それまでは、所得区分は3区分でしたが、改正後には5区分になっています。
【参考】全国健康保険協会『高額療養費制度が平成27年1月から変わります』
改正後の所得区分の場合、区分ウに該当する方が最も多くなると考えられます。
自己負担額がいくらになるのか実際に計算してみよう
実際に各区分での自己負担額を計算
では、実際に高額医療費制度を用いた場合に、どの程度の自己負担額となるのかを計算してみます。
例として、医療費が全体で100万円かかった場合で計算してみます。
以下では、5区分それぞれについて計算してみます。
区分アの場合
まず、最も高額所得者となる区分アの場合です。
医療費総額100万円を先ほどの計算式に当てはめると以下のようになります。
計算式 : 252,600円 + (医療費 − 842,000円) × 1%
252,600円 + (1,000,000円 − 842,000円) × 1%
ポイントは、()の中の「医療費」の部分には、健康保険適用前の医療費全額(例なら100万円)を入れる点です。
以上を計算すると、結果は
252,600円 + 1,580円 = 254,180円
となり、自己負担額は254,180円となります。
本来の自己負担額30万円に比べて、約4.5万円少なくなりました。
区分イの場合
続いて、2番目に高所得となる区分イの場合です。
医療費総額100万円を先ほどの計算式に当てはめると以下のようになります。
計算式 : 167,400円 + (医療費 − 558,000円) × 1%
167,400円 + (1,000,000円 − 558,000円) × 1%
以上を計算すると、結果は
167,400円 + 4,420円 = 171,820円
となり、自己負担額は171,820円となります。
本来の自己負担額30万円に比べて、約13万円少なくなりました。
区分ウの場合
続いて、真ん中の区分となる区分ウの場合です。
医療費総額100万円を先ほどの計算式に当てはめると以下のようになります。
計算式 : 80,100円 + (医療費 − 267,000円) × 1%
80,100円 + (1,000,000円 − 267,000円) × 1%
以上を計算すると、結果は
80,100円 + 7,330円 = 87,430円
となり、自己負担額は87,430円となります。
本来なら、自己負担額は30万円であるところが、2/7程度になりました。
区分エの場合
区分エの場合は、自己負担額が一律で決められています。
その金額は、57,600円です。
そのため、仮に医療費が全体で100万円かかった場合でも、自己負担は57,600円で済みます。
本来の自己負担である30万円の1/5程度になります。
区分オ(低所得者)の場合
区分オの場合も区分エと同様、高額医療費制度が適用となる場合の自己負担金額が一律で決まっています。
その金額は、35,400円です。
そのため、仮に医療費が全体で100万円かかった場合でも、自己負担は35,400円で済みます。
本来の自己負担である30万円の1/8程度になります。
高額療養費制度適用外の費用もあるため気を付けよう
以上が高額療養費制度の概要です。
この制度を利用すれば、入院で高額な費用が発生しても負担が大きくなりすぎることはありません。
そのため、医療保険を考える際に、医療保険で備える分を減らすこともできます。
ただし、高額療養費制度が適用とならない費用もあります。
それは、「差額ベッド代」や「食事代」です。
差額ベッド代とは、個室や二人部屋でのベッド代です。
食事代とは、病院で出されるご飯の代金(1食260円)のことです。
そもそも、これらは健康保険制度の適用となりません。
高額療養費制度が適用となるのは、あくまで健康保険が適用となる部分についてです。
そのため、これらは高額療養費制度も適用とはならないわけです。
なお、高額療養費制度のことも考慮することで、医療保険も上手に見直すことができます。。
ぜひ、あわせてご検討ください。
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