遺族年金は制度ごとにもらえる金額が異なる
家族のために頭の片隅には入れておきたい遺族年金のこと
普段の生活の中で、遺族年金のことを考えている人はほとんどいないと思います。
私も父が亡くなり、母が実際に受給するまでは考えたことがありませんでした。
遺族年金のことを知り、考えるようになると、
- 加入している社会保険
- 家族構成
- 受給者の年齢
により、受給できる遺族年金の期間や種類が異なることが分かりました。
保険のことを考える際にも遺族年金は重要
実は、遺族年金は保険のことを考える際にも重要です。
結婚したり、子供ができたりすると死亡保険のことを考える場面が増えます。
出産したときに必要な保険
遺族年金の受給額も考慮して死亡保障額を決めることが、間違いのない保険選びにつながります。
そのため、遺族年金のことは知っておいたほうが良いと言えます。
そこで、年齢や家族構成等ごとに、どういった遺族年金がいつまでもらえるのかを紹介します。
なお、以下では分かりやすくするために、以下の設定で書かせていただきます、
- 旦那さん:死亡
- 奥さん:遺族年金を受給
子供のいる、夫が「国民年金」に加入している世帯の場合
子あり:国民年金世帯の場合
まずは、
- 子供がいる家庭
- 夫の社会保険は「国民年金」
の場合で紹介します。
この場合は、子供の年齢により受給できるかどうかが変わってきます。
- 18歳の年度末を迎えていない子供がいる場合
- 18歳の年度末を迎えていない子供がいない場合
なお、以下では「18歳の年度末を迎えていない子」と記載していますが、正確には
「18歳に達したのち、最初到来するに3月31日までの間にある子」
となります。
18歳の年度末を迎えていない子供がいる場合
18歳の年度末を迎えていない子がいる場合には、遺族基礎年金を受給できます。
受給金額は次の表のとおりとなります。
項目名 | 遺族基礎年金額 | |
---|---|---|
子供が一人 | 1,002,600円 | |
子供が二人 | 1,225,100円 | |
子供が三人 | 1,299,900円 | |
以後、子供一人につき74,800円加算 |
18歳の年度末を迎えていない子供がいない場合
遺族基礎年金は、18歳の年度末を迎えていない子がいないと受給することができません。
そのため、18歳の年度末を迎えていない子がいない場合には、遺族基礎年金は支払われません。
これは、18歳の年度末を迎えていない子が年度末を迎えた場合も含まれます。
子供のいない、夫が「国民年金」に加入している世帯の場合
子なし:国民年金世帯の場合
続いて、
- 子供がいない家庭
- 夫の社会保険は「国民年金」
の場合で紹介します。
子供がいない国民年金世帯の場合は1通りしかない
子供がいない国民年金加入世帯の場合は、遺族年金のパターンは1つしかありません。
この場合、遺族年金は一切受給できません。
遺族基礎年金は、子がいることが受給の絶対要件となっています。
そのため、とても厳しいですが、遺族基礎年金を受給することはできません。
子供のいる、夫が「厚生年金(共済年金)」に加入している世帯の場合
子あり:厚生年金(共済年金)の場合
続いて、
- 子供がいる家庭
- 夫の社会保険は「厚生年金又は共済年金」
の場合で紹介します。
厚生年金に加入している会社員の方や、共済年金に加入している公務員の方が亡くなった場合です。
(なお、以下ではどちらも「厚生年金」と表記します。)
この場合は、子供の年齢により受給できる遺族年金の種類が変わってきます。
- 18歳の年度末を迎えていない子供がいる場合
- 18歳の年度末を迎えていない子供がいない場合
18歳の年度末を迎えていない子供がいる場合
18歳の年度末を迎えていない子供がいる場合には、次の2つの遺族年金を受給できます。
- 遺族基礎年金
- 遺族厚生年金
遺族基礎年金については、「子供がいて、夫が「国民年金」に加入している世帯の場合」でご紹介したとおり、18歳の年度末を迎えていない子がいる場合のみの支給となります。
遺族厚生年金については、受給にあたり子の年齢制限のような要件はありません。
遺族厚生年金の受給額は、夫が受給できるはずだった厚生年金の3/4の金額になります。
金額の計算については、別ページで詳しくまとめております。
遺族年金の基礎知識:遺族基礎年金よりも手厚い「遺族厚生年金」とは
18歳の年度末を迎えていない子供がいない場合
子供がいなかったり、子が18歳の年度末を迎えた場合には、受給状況に変化があります。
この場合については、次の項目の
「子供のいない、夫が「厚生年金(共済年金)」に加入している世帯の場合」
と同様になります。
あわせて次の項目をご覧ください。
子供のいない、夫が「厚生年金(共済年金)」に加入している世帯の場合
子なし:厚生年金(共済年金)の場合
最後は、
- 子供がいる家庭
- 夫の社会保険は「厚生年金又は共済年金」
の場合です。
子供がいても、全ての子が18歳の年度末を迎えた場合もこちらに含みます。
こちらは、奥さんの年齢で受給できる年金の種類が変わります。
- 奥さんが30歳未満の場合
- 奥さんが30〜39歳の場合
- 奥さんが40歳〜64歳の場合
奥さんが30歳未満の場合
子供がおらず奥さんが30歳未満(20〜29歳)の場合、受給できるのは遺族厚生年金のみとなります。
それも5年間の期限付きのものとなります。
この若年妻への有期支給については、平成19年4月から制度が改正されて導入されました。
【参考】日本年金機構『平成19年4月から改正された若齢期の妻に対する遺族厚生年金の見直しの内容について』
就労可能な若い女性に再就職等をしてもらうために、ということのようです。
奥さんが30〜39歳の場合
奥さんが30〜39歳の場合、受給できるのは遺族厚生年金のみとなります。
この年齢層の場合には、5年間の支給期限はありません。
金額は、夫が受給できるはずだった厚生年金の3/4の金額です。
ただ、この場合、旦那さんの厚生年金加入期間も短いため、あまり多くの金額は期待できません。
概ね、月4〜5万円程度です。
奥さんが40歳〜64歳の場合
奥さんが40歳〜64歳の場合、受給できるのは
遺族厚生年金 + 中高齢寡婦加算
になります。
なお、30〜39歳の子供のいない奥さんが40歳になった場合には、こちらに該当します。
中高齢寡婦加算とは?
中高齢寡婦加算とは、40〜64歳の間の子のない妻に対して支給される加算年金です。
共済年金では、「妻加算額」と言います。
金額は年額で585,100円です。
この中高齢寡婦加算は、中高齢の就職が難しい時期の妻に年金を加算する制度です。
- 子なし妻の場合は、自身が40歳になった時点で、
- 子あり妻の場合は、自身が40歳になった後、子供が18歳の年度末を迎えた時点で
支給されることになります。
中高齢寡婦加算が支給されるのは女性のみ
遺族年金制度は基本的に男女の制度差はありません。
平成26年の4月から、遺族基礎年金は夫にも支払われるようになりました。
ただし、中高齢寡婦加算制度は女性にのみ適用される制度となっています。
死亡保険を考える際には遺族年金のことを考慮しましょう
遺族年金は大きな遺族保障です
繰り返しとなりますが、遺族年金制度は死亡保険を考える際に大きな役割を占めます。
遺族年金のことを考慮すれば、死亡保障額を減らすことができます。
死亡保険は保険料が高額になりがちですが、死亡保障額を減らすことができれば支払う保険料も安くて済みます。
死亡保障額 − 遺族年金額 = 死亡保険の死亡保障額
難しい場合は専門家に相談を
遺族年金の考慮が大切とは言っても、自分だけで死亡保障額を計算するのはなかなか難しいものです。
その場合は、生命保険の専門家に相談すると良いです。
ファイナンシャルプランナー(FP)という専門家に相談することで、間違いのない死亡保障額を知ることができます。
私も実際に相談して保険に入りましたが、自分に最適な保険を教えてもらえます。
相談は無料でできるので、遺族年金のこと等も考慮して死亡保険を選びたい場合には最適な相談相手です。
専門家の力を借りたり、自分で調べたりしながら、しっかりと万一の場合への備えも検討してみてくださいね。
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