医療保険を考える際にはぜひ知っておきたい「傷病手当金制度」とは

会社員や公務員は怪我や病気で入院しても安心

薬

会社員の方が加入している健康保険や、公務員の方が加入している共済組合には、怪我や病気で仕事を休んだ際に、生活費を保障する制度があります。

 

それは

 

傷病手当金制度

 

という制度です。
この制度は、国民健康保険には存在しない、会社員の方の健康保険や共済組合だけの制度です。

 

この制度を利用することで、怪我や病気で仕事を休んでも生活費の心配が格段に少なくなります。
では、実際にはどのような制度なのか、また、傷病手当金制度ではどの程度の金額を受給できるのか、具体例を用いて説明します。

 

傷病手当金はどんな時にどのくらいの期間もらえるのか!?

傷病手当金とは

説明する男性

傷病手当金とは、病気やけがのために仕事を休み給与が得られない場合に、その間の生活保障として支払われるお金です。

 

ただし、この場合の「病気やけが」は仕事を原因としないものであることが要件となります。
仕事を原因とする者の場合は、労災保険が適用になり、傷病手当金よりも手厚い休業補償給付が受けられます。
(公務員の方の場合は公務災害となり、給与が全額支給されます。)

 

また、休んでいる間に給与が支払われる場合は、傷病手当金が支払われません。
受け取る給与が、傷病手当金より少ない場合は、傷病手当金との差額が支給されます。

 

以上をまとめると、傷病手当金が支払われる条件は以下のようになります。

 

傷病手当金が支払われる条件
  • 仕事を原因としない病気やけがである
  • 仕事に就くことができない
  • 給与が支払われない または傷病手当金より少ない
  • 連続して4日以上仕事に就くことができない(後述)

 

支給期間はどのくらい?

傷病手当金の支給期間は、最長で1年6か月となっています。
もし、休んでいる間も会社等から一定期間の給料の保障があれば、それが終わって、傷病手当金が支給されるようになってから1年6か月ということになります。

 

傷病手当金の算出方法

続いて、傷病手当金の算出方法について説明します。
ちょっと回りくどい説明となります。

 

傷病手当金は標準報酬日額の2/3相当

傷病手当金で支払われる金額は、健康保険料算定の基礎となる標準報酬日額の2/3相当額です。
(月額ではなく、日額な点に注意してください。)
標準報酬日額は、標準報酬月額を30で割って1円単位を四捨五入して算出します。

 

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、健康保険の等級を決めるために給与から導かれる金額です。

 

会社員の方が加入する健康保険の1つである、協会けんぽの場合、こちらの保険料額表をもとに決定されます。
税引き前の給与を報酬月額欄に当てはめると、標準報酬月額が分かります。

 

傷病手当金には待機期間がある

傷病手当金が支給されるのは、病気やけがを理由として仕事を連続して3日休んだ後、4日目からとなります。
4日目から最長で1年6か月間支給されることとなります。

 

この最初の3日間ですが、これを「待機期間」と言い、連続していなければいけません。
連続して3日休むことで待機期間が完成します。

≪傷病手当金の待機期間≫

 

待機期間の完成と傷病手当金の支給

 

会社員の場合、土・日・祝日も傷病手当金は支給される

会社員の方が加入する健康保険の場合、傷病手当金は土・日・祝日でも支給されます。
そのため、計算をする際には、標準報酬日額に単純に休んだ日数から3日除算した日数をかけます。

 

公務員の方の場合は、土・日・祝日は支給されません。
その変わり、計算する際に、支給金額を1.25倍するようになります。

あなたはいくらもらえる?実際に傷病手当金額を計算してみよう!

実際に計算してみよう

では、実際に傷病手当金額を計算してみます。
ここでは、標準報酬月額が300,000円である場合を例に考えてみます。

 

手順1 標準報酬日額の算出

まず、標準報酬月額を30で割って標準報酬日額を算出します。

 

標準報酬月額 300,000円 ÷ 30 = 10,000円

 

計算の結果、標準報酬日額が10.000円となりました。

 

手順2 標準報酬日額から傷病手当金を産出

続いて、標準報酬日額を2/3して、傷病手当金額を算出します。

 

標準報酬日額 10,000円 × 2/3 = 6,667円(1円未満切り上げ)

 

この6,667円が1日あたりの傷病手当金額となります。

 

1か月あたりどのくらいになるのか

この標準報酬日額に、土日祝日を含む休んだ日数をかけることによって、傷病手当金の総額が分かります。
具体的に計算してみます。

 

  • 1か月目 : 6,667円 × (30日 − 3日(待機期間)) = 180,009円
  • 2か月目 : 6,667円 × 30日 = 200,001円
  • 3か月目以降は2か月目と同じ。

 

今回の例であれば、傷病手当金の金額はこのように最初の1か月は180,009円となります。
2か月目以降は1月あたり200,001円となり、これが最長で1年6か月間支払われます。

 

傷病手当金は少なく感じますか?

以上のとおり、傷病手当金の金額を計算することができます。
繰り返しとなりますが、標準報酬月額が300,000円の場合、傷病手当金は1月でその2/3相当の200,001円となります。

 

この標準報酬日額の2/3という数字ですが、ちゃんと理由のある数字となっています。
その理由とは、給与の約1/3が税金や社会保険料での控除額となっているということです。

 

そのため、標準報酬日額の2/3は、給与の手取り額相当額になるようになっています。
(実際には手取り額よりやや少なめにはなります。)

 

具体的に計算してみますと、毎月の税引き前給与支給総額が300,000円の場合、各種税金や社会保険料が引かれ、手取り額は概ね232,105円となります。
それに対して、傷病手当金は200,001円となっています。
傷病手当金の方がやや少なくはなりますが、手取り額相当額となっています。

医療保険を考える際には傷病手当金を考慮しましょう

傷病手当金は働けない間の大きな保障

働く女性

以上が、傷病手当金制度とその支給額です。

 

傷病手当金は、会社員や公務員の方が働けない間の生活保障となります。
その期間は、1年6ヶ月と長期間となっています。

 

この制度を利用することができる会社員や公務員の方は、医療保険を考得る際に考慮することができます。
傷病手当金を入院時の保障と考えることで、医療保険の保障を少し減らすことができるわけです。

 

反対に、この制度を利用できない国民健康保険に加入している方(自営業の方等)は、医療保険を考える際に、しっかりと備えられる金額で加入する必要があります。

 

医療保険への加入を考える際には、ぜひ、傷病手当金の有無も加味して考えてみてください。
そうすることで、無理に保障額を大きくしなくとも、ちゃんと入院や通院に備えられる保障が得られます。

 



 

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