引受基準緩和型の保険とは
従来、健康状態に不安がある方の場合、保険に新規加入することは難しいことでした。
健康状態に不安があるとは、
- 過去に大きな病歴がある
- 持病がある
- 健康診断の結果が悪い
というような方のことです。
しかし、近年では、そうした健康状態に不安のある方でも加入しやすい保険が登場しています。
通称で『持病があっても入れる生命保険』と呼ばれることもあります。
その保険とは、『引受基準緩和型保険』というものです。
現在は、多くの保険会社で引受基準緩和型保険を発売しています。
では、実際に引受基準緩和型保険とはどのようなものなのか。
普通の保険と比べて保険料はどの程度異なるのか。
以下では、そうした点について説明します。
『引受基準緩和』とはどういう意味か
『引受基準緩和』って何?
持病があってっも入れる生命保険は、正式名称を『引受基準緩和型保険』と言います。
では、『引受基準緩和』とは何でしょうか。
以下では、まず『引受』と『引受基準』とはそもそも何であるのか。
そして、その『緩和』とは一体何なのか。
その順番で説明します。
『引受』と『引受基準』とは
『引受』とは、保険会社が保険を提供する際の引受条件のことです。
そして、引受条件とは、加入にあたっての保険会社側の加入条件です。
保険に加入するには、保険会社が定める健康状態の条件をクリアする必要があります。
その条件とは、例えば、
- 過去に病歴がない
- 血圧の値が○○〜▽▽の間
- コレステロールの値が○○以下
というようなものです。
この引受条件のことを『引受基準』と言います。
引受基準を『緩和』とは
上記のような、引受基準を緩和したものが、引受基準緩和型保険です。
つまり、引受条件緩和保険とも言えます。
では、何をどのように緩和しているかと言いますと、引受基準に合っているかをチェックするための質問項目を緩和しています。
引受基準チェックのための質問は具体的には以下のような感じです。
- 過去3か月以内に医師の診察・検査・投薬・治療を受けたことがあるか
- 過去2年以内に人間ドックで異常の指摘を受けたことがあるか
- 過去5年以内に手術を受けたことがあるか
- 過去5年以内に病気で医師の診察・検査・治療・薬の処方を受けたことがあるか
このような質問で、引受基準に合致するかをチェックするわけです。
そして、具体的な『緩和』の方法としては、質問項目の数を少なくすることで緩和しています。
引受基準緩和型ではない保険であれば、上記のような加入時の質問項目は10〜15個程度あります。
それが、引受基準緩和型保険では、3〜5個となっており、質問数が緩和されています。
質問数が少ないということは、加入条件がしやすくなっており、すなわち引受基準が緩和されているわけです。
保険の種類や特徴にはどんなものがあるのか
保険の種類は『医療保険』
引受基準緩和型保険としては「医療保険」や「がん保険」の設定があります。
「第三分野の保険」と言われる、医療保険がその対象となっています。
(一部、死亡保険でもありますがかなり数は少ないです。)
また、引受基準緩和型の医療保険に特約で死亡保障を付けられるものも存在します。
引受基準緩和型保険が登場した背景には、保険の規制緩和により、損害保険会社が参入したことも大きいです。
それにより、医療保険の商品開発が進み、引受基準緩和型保険が登場しました。
また、最近では、引受基準緩和型の医療保険に特約で死亡保障も付加できるものもあります。
保険の特徴はどのようなものか
引受基準緩和型保険の内容は各社微妙に異なりますが、主な特徴は以下のようになっています。
この点が、特に引受基準緩和型保険の大きな特徴となっています。
通常、過去に大きな病歴などがあれば保険への加入は難しくなります。
ですが、引受基準緩和型保険では、大きな病歴があっても一定期間が経過すれば加入ができます。
なおかつそれらの再発でも保険金が支払われます。
やはり、病歴があると、健康な人よりも保険のありがたみは感じることと思います。
そうした方にとって、この特徴は大きな安心感につながることでしょう。
引受基準緩和型保険では、契約日から1年間
「支払削減期間」
を設けています。
私が知る限り、全ての引受基準緩和型保険で設けられています。
支払削減期間とは、その間に入院や手術等の保険金支払事由が生じた際には、支払われる保険金額が50%になってしまう期間です。
これは、病歴等がある方は、健康な方と比べるとどうしても発病のリスクが高いために設けられている期間です。
ただし、支払削減期間を1日でも過ぎれば、保険金は全額支払われるようになります。
当たり前と言えば当たり前ですが、引受基準緩和型保険は普通の医療保険に比べて保険料が割高です。
病歴等がある分、普通の保険に比べて、保険金を支払う確率が上がるため、支払いへの備えも必要となり、その分保険料が上がっています。
では、具体的にどの程度上がるのかを見てみたいと思います。
比較に用いるのは、オリックス生命の『新CURE』と同社の引受基準緩和型保険『CURE SUPPORT』です。
【保険料算出条件】
- 年齢性別 : 40歳男性
- 払込期間 : 終身払い
- 保険期間 : 終身
- 入院日額 : 5,000円
- 保障日数 : 60日
- 付加特約 : 先進医療特約
保険商品 | オリックス生命 新CURE |
オリックス生命 CURE SUPPORT |
---|---|---|
毎月の保険料 | 2,187円 | 4,110円 |
以上のように、40歳男性で同じ保障内容であっても保険料は2,000円ほど差がでます。
引受基準緩和型保険の方が高くなるわけです。
ですが、通常、保険に加入することが難しい方であっても入れる保険であるため、そうした方にとっては月2,000円の差額で加入できるためそこまで割高ではないでしょう。
また、引受基準緩和型保険は登場したての頃ほど保険料が著しく高額になるものでもなくなってきました。
そのため、健康に不安がある方にってはとても役に立つ保険であると言えます。
引受基準が『厳しめ』と『易しめ』の保険の違いとは
引受基準は各社異なっています
引受基準緩和型保険は保険会社各社から出されていますが、引受基準に各社の違いが表れています。
細かい違いを挙げればきりがないのですが、その違いは大きく2つに分けられます。
- 引受基準がやや厳しめである保険会社
- 引受基準が厳しくない保険会社
の2つです。
では、具体的に引受基準の厳しさの違いはどのように表れているのでしょうか。
それは、引受基準への適合を知るための質問項目の内容に表れています。
質問項目に現れる引受基準の厳しさの差異とは
質問項目への引受基準の厳しさの表れ方ですが、以下の2社を見ていただくと分かるかと思います。
≪メットライフ生命 『ずっとあなたと』≫
質問項目(以下の全てに「いいえ」で申し込めます。)
- 最近3ヵ月以内に受けた医師による検査または診察で、入院または手術をすすめられたことがありますか。
- 過去1年以内に、病気やケガで入院したこと、または手術を受けたことがありますか。
- 過去5年以内に、ガン(悪性新生物および上皮内新生物)または肝硬変で、入院したこと、または手術を受けたことがありますか。
≪オリックス生命 『CURE SUPPORT』≫
質問項目(以下の全てに「いいえ」で申し込めます。)
- 最近3か月以内に、入院・手術・検査のいずれかをすすめられたことがありますか?または、現在入院中ですか?
- 過去2年以内に、【別表1(脳卒中、心筋梗塞等)】の病気で入院をしたことがありますか?
- 過去2年以内に、糖尿病(高血糖や糖尿病の疑いを含む)で入院をしたことがありますか?または、過去2年以内に、糖尿病の合併症(網膜症、腎症、下腿皮膚かいよう)で医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかをうけたことがありますか?
- 過去5年以内に、【別表2(がん、肝硬変、心筋症等)】の病気や異常で入院または医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかをうけたことがありますか?
どちらも似ている部分もあります。
例えば、この2社とも、3か月以内の入院や手術をすすめられたことの有無を聞いています。
ただ、決定的に違うところがあります。
それは、上の質問項目で黄色で色を付けた部分です。
メットライフ生命なら3番目の項目、オリックス生命なら4番目の項目です。
どちらも、がんや肝硬変での治療歴を聞いています。
ですが、メットライフ生命では「入院または手術を受けたこと」のみを聞いているのに対し、
オリックス生命では入院に加え、「診察・検査・治療・投薬」の有無も聞いています。
この違いはとても大きいです。
メットライフ生命では、6年前にがんで入院・手術をし、その半年後に退院して通院で投薬治療をしていたとしても、引受基準緩和型保険には加入できることになります。
しかし、オリックス生命では同様のケースでは、退院後にも治療や投薬を受けていることから、引受基準緩和型保険であっても入ることはできません。
すなわち、
- メットライフ生命は引受基準が厳しくない=加入しやすい
- オリックス生命は引受基準が厳しい=加入がやや難しい
ということになります。
引受基準緩和型保険を検討するにあたって、これはとても大きな違いです。
質問項目はよく読んでみると各社違います
以上のように、質問項目を見てみることで、一口に引受基準緩和型保険といってみても、その引受基準の厳しさに違いがあることが分かります。
そのため、加入の前には質問項目をしっかりと呼んでみることが大切です。
ただし、引受基準が厳しい方にももちろんメリットはあります。
それは、加入できさえすれば、引受基準が厳しくない方よりも保険料が安いということです。
上記の2社では、引受基準が厳しいオリックス生命の方が、メットライフ生命より保険料が全年齢で1〜2割安くなっています。
各社の保険料の違いから見る比較して加入することの大切さ
引受基準緩和型保険でも保険料には差があります
以上が、引受基準緩和型保険の特徴です。
加入のための引受条件が緩和されており、健康に不安のある方でも入りやすい保険となっています。
そして、その緩和は加入前の質問項目数や条件とする治療歴に現れていました。
こうした引受基準緩和型保険は、現在各社で発売されています。
ただ、各社ともに保険料には差があります。
具体的に算出してみると以下のようになります。
【保険料算出条件】
- 年齢性別 : 40歳男性
- 払込期間 : 終身払い
- 保険期間 : 終身
- 入院日額 : 5,000円
- 保障日数 : 60日
- 付加特約 : 先進医療特約
保険商品 | アフラック もっとやさしい EVER |
オリックス生命 CURE SUPPORT |
メットライフ生命 ずっとあなたと |
---|---|---|---|
毎月の保険料 | 3,600円 | 4,110円 | 4,366円 |
以上のように、同じ算出条件でも保険料には最大で月766円の差が出ました。
また、保険料は、加入前の質問項目の数や条件とする文言によっても変わってきます。
質問項目が多く問われる病歴が多ければ、それだけ保険には加入しづらくなるため、保険料が安くなります。
質問項目が少なく問われる病歴が少なければ、それだけ保険に加入しやすくなるため、保険料が高くなります。
そのため、引受基準緩和型保険に加入する場合には、各社比較し、自分が加入できる最も安い部類の保険を選ぶと良いでしょう。
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