毎年11月は年末調整の時期です
年末調整の中身はご存知ですか?
会社等にお勤めの方は、毎年11〜12月に次の2枚の書類を手渡されます
- 給与所得者の扶養控除等(異動)
- 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書
これらは、年末調整を行うための書類です。
会社でこうした書類をもらったことはあるけど、年末調整のことはよく知らない、と言う方は多いのではないでしょうか。
年末調整とは
年末調整とは、年末に行う1年間の所得税の清算手続きです。
所得税は、年間の所得に税率をかけて税額を計算します。
そのため、年末の最後の給与が支払われないと、正確な所得税額が分かりません。
しかし、年末に1年分を一気に納めるのは納税者の負担が大きすぎます。
所得税額の計算例
例えばですが、年間800万円の所得がある人の所得税額は次のようになります。
8,000,000円(所得) × 23%(所得税率) − 636,000円(所得税額控除) = 1,204,000円(所得税額)
なんと、所得税額は約120万円にもなります!
この金額を一気に年末に支払おうと思うと相当大変です。
そのため、毎月の給与の額に応じて、12分割して概算で毎月所得税を支払っています。
先ほどの年間所得が800万円の方の場合、月の給与は66万円前後になります。
その場合、毎月58,130円の所得税が給与から引かれています。
そうした毎月の所得税額は、国税庁のホームページで知ることができます。
【参考】国税庁 『源泉徴収税額表』(月額表が毎月の金額です。)
概算払いのため実際の金額とは乖離が出ます
ただ、毎月概算で支払っていると、正確な所得税額とは乖離が出てきてしまいます。
また、後述する保険料控除制度等により、所得税が減税される制度もあります。
そうした控除制度は、毎月の所得税額では考慮されていません。
そこで、年末に年間所得が確定した時点で、所得税を再計算する手続きが年末調整です。
その際には、控除制度も適用して、
- 所得税を取り過ぎていれば返還
- 所得税が不足していれば追徴
することになります。
冒頭で挙げた年末調整の2枚の書類を通じて、こうした手続きが行われています。
各種控除制度の計算も行います
各種控除制度とは?
年末調整は、所得税の清算手続きであると書きましたが、その際に重要なものがあります。
それは、「控除制度」です。
控除制度とは
控除制度とは、税額を計算する際に、その計算の基礎となる金額を減らす制度です。
所得税であれば、所得税額は年間所得に税率をかけて計算します。
控除制度では、その年間所得の金額から、控除分を減らすことができるのです。
( 年間所得 − 控除額 ) × 所得税率 = 所得税額
控除を行うことで、所得税額算定の基礎となる年間所得そのものが減ります。
そのため、結果的に所得税額自体も少なくなります。
年末調整の用紙では控除制度についても申告します
以上のように、控除制度を用いることで、初めて所得税額が確定されます。
ただし、控除制度は自分で申告しないと適用されません。
控除制度にはさまざまな種類があります。
どの控除制度がどのくらい適用されるのかを申告するのも、年末調整の役割です。
年末調整で申告できる控除制度にはこのくらいの種類があります
所得税の控除制度にはいろいろなものがあります。
控除制度の一部は、年末調整の際に申告することができます。
実際に申告できるのは、次のような控除制度です。
- 配偶者控除 : 扶養範囲内の配偶者がいる場合の控除
- 配偶者特別控除 : 扶養範囲を超えた場合の一定額までの控除
- 扶養控除 : 16歳以上の扶養親族がいる場合の控除
- 生命保険料控除 : 生命保険料を支払っている場合の控除
- 地震保険料控除 : 地震保険や家財保険を支払っている場合の控除
- 社会保険料控除 : 国民年金や健康保険料を支払っている場合の控除
- 小規模事業共済等掛金控除 : 経営者等で小規模事業共済等を支払っている場合の控除
年末調整用紙の記入事項に基づき、該当する控除が適用されます。
こうした控除額の申告をもって、ようやく所得税額が決定されます。
年末調整のもう1つの役割
実は所得税だけではありません
年末調整の手続きは、所得税の還付だけではありません。
実は、翌年の住民税の算定にも使われています。
住民税とは?
住民税とは、「都道府県民税」と「市区町村民税」の2つの総称です。
所得税が国が徴収する「国税」であるのに対し、住民税は地方自治体が徴収する「地方税」です。
毎年、6月〜5月を1区間として住民税の徴収が行われます。
住民税は、前年の所得に応じてその税額が決定されます。
前年の所得が確定しなければ住民税額を算定することができません。
そのため、前年分の所得の確定作業に、年末調整が利用されています。
より正確には、年末調整に基づき会社等が税務署に提出した所得や控除等の報告が、地方自治体にも送られ、住民税額決定に利用されています。
住民税に関わってくる部分とは?
年末調整で、住民税に関わってくるのはほぼ全ての記載事項です。
2枚の用紙を記入することで、先ほど挙げた扶養控除等が住民税でも適用されます。
(控除額は所得税と住民税では若干異なります。)
ただ、扶養控除度等申告書には後述する事情から、住民税に関する記入部分があります。
扶養控除等申告書の住民税関係部分
扶養控除等申告書に住民税の申告枠がある理由
平成22年分の扶養控除等申告書まではこうした住民税専用の申告枠はありませんでした。
この枠ができたのには、平成23年から始まった、子ども手当(現、児童手当)と公立高校無償化が関係しています。
これらの施策が行われるまでは、扶養控除は0歳以上の扶養親族が対象でした。
しかし、上記施策実施のための財源を確保するために、対象が16歳以上の扶養親族へと変更されました。
それにより、現在、所得税と住民税の扶養控除はともに16歳以上が対象となっています。
住民税で16歳未満の申告が必要なのはなぜ?
では、何故住民税で16歳未満の扶養親族の申告が必要かと言うと、地方自治体がその人数を知りたいからです。
住民税は、「所得割」と「均等割」という2つの計算方法により算出されます。
所得割と均等割は、一定の所得以下の場合非課税となります。
その、非課税対象者を判断する場合には、16歳未満の扶養親族も計算の基礎にされます。
そのため、住民税の申告専用枠が設けられているのです。
所得割と均等割が非課税になる場合の計算方法については、横浜市のホームページが分かりやすいです。
【参考】横浜市『均等割・所得割の納税義務者』
年末調整は保険見直しに最適なタイミングでもある
保険を見直すには年末調整は最適の時期
見落とされがちですが、年末調整は生命保険の見直しをするのに最適なタイミングです。
保険に加入後、加入している保険の内容を意識することって少ないですよね。
そこで、年に一度、必ず保険の事を少しでも考える時期に、振り返ってみると良いです。
そのために最適なのが年末調整の時期です。
年末調整の時期には、必ず生命保険料控除に関する書類が送られてくるため、一年の中で最も生命保険の事を意識するタイミングと言えます。
現在の保険は大分安くなっている
最近の保険は、以下のような点によりかなり保険料のスリム化が図られています。
- 解約時の返戻金をなくす
- 無駄な保障をつけない
反対に、古い保険は、使わない特約等がてんこ盛りとなっており、保険料がかなり割高です。
そのため、古い保険に加入している場合には、見直すことでかなり保険料を安くすることができます。
その保険本当に必要ですか?
私の仕事先では、昔入った死亡保険に年間約36万円(月3万円)近く払っている人がいました。
その人はお子さんも独立しており、夫婦共働きだったため、死亡保険はそんなに必要ありません。
この人の場合は、まだ貯蓄型の保険であったため、高い保険料を払っていても完全には無駄にはなりません。
こういった保険の場合はまだ良いんですが、掛け捨ての保険を惰性で払い続けるのは非常にもったいないです。
そのため、保険の事を少しでも意識する年末調整の時期に、今入っている保険の確認することをおすすめします。
保険の無駄な部分をそぎ落とすと、毎月の保険料の負担を減らすことができます!
普段保険のことを考えない方も、年末調整の時期には少しだけ考えてみてくださいね。
年末調整では生命保険料控除の出番が多い
生命保険料控除の申告していますか?
年末調整についてご説明してきましたが、先ほどの控除制度の中に
生命保険料控除
というものがありました。
生命保険料を支払うことで、一定額の控除を受けることができます。
年末調整での控除の申告は、生命保険料控除が占める割合が大きいです。
一体いくらくらい控除されるのかや、どういった生命保険が対象になるのか等々、細かい部分があります。
生命保険料控除については、以下のページで説明しています。
あわせてごらんいただければ幸いです。
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